M is MEAT?

はじめては近所に住む幼馴染のおねえさんだった。

髪の色や顔立ち、それ以前に交わした会話などは一切憶えていない。唯、撫で回した女体の肉付きだけは鮮明に記憶されている。乳房ごと毟り取ると、男の深爪が食い込んで血がにじみ、白いキャンバスに点々と模様を描いた。乳房がぶくぶくと膨れ上がってみっともない。こんなもの牛と同じだ。ちょっと、痛いわ。女の子には優しくしてちょうだい。姦しい牛の鳴き声が鼓膜を揺らす。布に覆われた生殖器は見られたものじゃなかった。臍のあたりから重力に従って流れる肉。苛立って右手で挟み込むと身をよじらせてモウモウと啼いた。

その日の夕飯はビーフシチューだった。

次の日、町から女が失踪した。

「七面鳥、ひとつください」

 よほどの料理好きでなければクリスマスとはいえオーブンを開ける手間を惜しむものだが、ひとりで小銭を握りしめてまるまると太った鶏肉を買いに来る肉がいる。

 はかりも使わず鶏を定量に切り分ける。繊維が切断される感触が、平たい金属を通じて指先に伝わる。ガラスのショーケースの上で作業をすれば、つむじが目に入る。肌つやがいい。ほんのり開いた口腔から並ぶ歯はほとんどが乳歯だ。白眼は澄んでおり、健康状態は良好。乳臭い。お釣りを渡すとき触れた手のひらも、ふかふかで、弾力がある。

 気がつけば男は頭頂部にだらりと涎を垂らしていた。少年がショーケースに夢中で頬を貼り付けていたことで命拾いした。

 ばいばい、おじさん。ビニル袋を揺らして帰っていく少年のコートから赤い膝小僧がちらと覗いた。

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